2018年4月19日木曜日

排泥鋳込み超入門 Vol.2 闇ヤキモノ教習(仮

 排泥鋳込み超入門 Vol.2 ということで、スラリーを作ってみましょう。
 今あっさり泥漿のことをスラリーと言っちゃいましたがどっちでも好きなほうで読んでください。同じです。多分。

 確か水分量だか流動性だかが基準で学術的っぽい定義はあったようななかったような感じですが、我々の場合とりあえず坏土(これから成形するぞって段になった生地)としての状態がトロッと流れる原料粉末懸濁液=ドロドロ粘土をこれらのように呼ぶってことでいいんじゃないでしょうか。

 この言葉、素地の場合だけじゃなくて釉薬の場合も使えますよ。粉末釉薬と液体釉薬つって売ってますけど正しくは粉末状釉薬と泥漿状釉薬じゃねえのかなあと・・・、まあもれなくゼリー状、もしくは沈殿しちゃってますけどね。

 無駄口はさておき・・・
鋳込み泥漿の作り方ですが、出発原料から見て二通り考えられます。
 1、今ある土=普段作ってる粘土を水に溶かす。
 2、原料粉末を調合して作る

 どっちがお手軽かははっきり言ってわかりません。まあ鋳込み泥漿つって売ってるものまであるんですね。使ったことないんでわかりませんが、振って濾すだけでいいんだったら楽でしょうね。

 まず、今ある土を使う場合。再生させる時と同じように乾燥させたものを水で戻すやり方は楽だと感じます。フィルタープレスしたものや塊のままのものは案外溶かしにくい場合が多く、ダマが大きいままかなり残ります。

 おすすめは轆轤の削りカスなど。高台削ったりしたときの切子は薄いからすぐ乾燥するし水に入れればあっという間にほぐれます。切子ばっかで2~300gとなると結構な量ですが、とにかくすぐほぐれる状態の乾いたもの。なければ固くなっちゃった塊をカンナでシュルシュルやってもいいんじゃないの?

これはすぐ乾いてほぐれるのでお試しにはうってつけですよ
 
 原料から調合する場合はもう簡単に
 可塑性原料   50%
 長石      30%
 硅石、シリカ  20%
 でいいんじゃないでしょうか。磁器になります。可塑性材料50%は木節とか蛙目(変換できなかった)、○○カオリンでいいです。単独でも混ぜてもいいです。粘土鉱物の違いは水分量とか鋳込み時間に大きく影響しやすいです。粘るほど細かいほど長くなる傾向。粘りすぎる場合は一部、あるいは全部を煆焼して調整可能です。混ぜるんだったらカオリンの方大目がおすすめ。

 本だと粘土50%長石25%硅石25%あたりの調合が基本ってのをよく見かけるんですが、フリー硅石がこんなにあるって釉に影響しないのかな?減らせるもんなら減らした方がいいというのが個人の経験的実感です。珪酸質剥き出しは釉薬はじくよねえ。

 私自身の調合は硅石は10%ぐらいに抑えてアルミナ粉末を入れてます、長石を増やして行けば結構焼成温度は下げられます。カオリンと長石だけでもボーンチャイナ風の透光性のごつい温度低いのが作れるんですが、調子悪い時の高安みたいに腰が甘いんですよね。

 この辺の素地調整に関しては私も知見が甘いのですが、おいおいいろいろやってみたくなってきました。まあ今回は先の調合ということで。

 先にある程度篩って大きいダマをなくし、よく混ぜておくと後が楽です。混ぜ方で一番簡単なのはポリ袋に入れてよく振るのが一番簡単で高性能です。
 
篩って(ここでの篩はザルでも何でもいいよ) 
ポリ袋は膨らませてからシェキロッ!!!
このポリ袋シェイク法はめちゃ優秀な方法です。釉薬でもなんでも振り回せる範囲なら先にやっておくことをお勧め!!粘土の粉は水の中でダマになっちゃいやすいんですが、かなり緩和できます!あのくそ忌々しいベントナイト(通称ベンナイ)もあっさり混ざるぞ!

 原料が準備できたら次のものを用意
1・解膠材、水ガラス(ケイ酸ナトリウム)その他
 解説は省きますが、うちは仕事の性質上水ガラス使ったことほとんどないんですけど、なにしろ解膠力はピカ一なのでこれがいいでしょう。材料屋で買えるしね。なんか番手があるみたいですがすみませんよくわかりません。

 解膠材って何?ってことですが、要はその材料(粘土)に適した界面活性剤です。粘土の粒子と粒子の隙間にまで水分を回り込ませることで流動性がスムーズになって結果水分量が下がります。これは結局どういうことかというと素地の粗密や水分量、結合の圧力などなどがいい方に均一化されるということですね。
 まあ、とにかくこれを混ぜると鋳込みでモノ作るのがやりやすいってことです。

2・#60番程度より細かいの篩(60目でもいいです)
  #100もあればベスト
 
3・ビー玉と1L用広口瓶
 このサイト屈指の人気記事で紹介しました。
 ビー玉は広口瓶の三分の一ほどの嵩で、できれば径の小さいほうがいいです。
 遊ぶ用の普通サイズ(15~6mmですかねえ)でもOK!

4・ペットボトル
 保存容器ですね。広口瓶にそのままでももちろんOKです。

5・あとは秤

 では、水と解膠材の量ですが、
 考え方としてわかりやすいのは原料の乾燥重量に対して解膠材の有効成分量の割合を決めておいてあとは水分だけで調整する方法だと思います。
 とりあえずなぜか解膠材は有効成分量で0.3%~0.5%ってのが多いのでそれで決めましょう。(ところで水ガラスってどろんとしてますけどあれはなに?本来は粉末なんですか?よく知らないんだよな済みません。こないだ実験してドロっとしたまま全量計算してうまくいったのでそれでいいや。)
 原料の乾燥重量300gに対してなら1gの水ガラス、と。

 水分量ですが、とりあえず35%あたりから始めましょう。
 乾燥重量300なら105gの水。
 105gの水に1gの水ガラスを溶いてよくかき混ぜます。

 正確にはこの水分量解膠材料に関しては原料粉末の重さ自体ではなくて、配合された成分や特に粒径の細かさ(総比表面積)によって変わるってのが理解としては正しいんですが、そんな数字がわかったとしても結局やりながら詰めてくしかないと思います。

 この解膠剤入りの水に原料を入れてしばらく置きます。しばらく置いたら棒や薬匙的なものでかき混ぜます。頑張ってかき混ぜます。生クリームと逆でだんだん馴染んで重めの液体になっていくと思います。このなめらかな感触は大事なうえに気持ちいいのでぜひ経験してください。
 水面もただの水に粘土溶かした時とは違う感じになるのがわかると思います。

 いつまでたっても粘土の塊なだけ、バサついてる、って場合は水を少しだけ足します。少しってのが大事。5gぐらいづつで。水は40~45%あたりまでにしてください。それでも調子が悪い時は解膠材を増やすんですが、棒の先にちょっとつけてその棒でかき混ぜるって感じでいいです。
 解膠材が多すぎるのも水が多すぎるのも具合悪いんですが、どっちかっていうと解膠材が多すぎる方が取り除きにくいのでたちが悪いかな。
 
 どんどんトロトロした液体が増えてきたと思います。大変だったらこの状態でゴミが入ったり、水気が抜けないように袋にでも入れて一日ほっぽっておくのもアリです。
 

 ほぼ液体になったように見えて、たまに混ぜ棒を上げると先の方にダマ粘土がついてるんじゃないかと思いますが、少しづつ溶けるのでよく混ぜます。
 いい加減あんまりダマはないなあ、少なくなったなあってところで篩を通すと結構米粒程度のダマ玉がたくさんあると思います。
 そこでそのダマダマと越した液体の半分をビー玉の入った広口瓶に入れてシェイクします。
 おすすめの方法は「マルセイユルーレット方式」
こうしてウリウリ動かします。
ちなみにわたくし、ジダンと同い年です。
奴が頭角を現したころ(20代前半)あまりの貫録の違いにビビりました。
マテラッツィにヘッドバッド喰らわした時よりビビったもんです。

 じゃあしばらく頑張ってください。

 私はちょっとトイレ行ってきます
俺なんかこうだもんね!

 気が済むまでで結構なのでいい加減やったら取り置きした半分もビンに入れて「カクテル」のトムクルーズみたいにシェイクしてください。髪型までマネしないで結構です。変な髪形してるのはカクテルじゃなくて「ハスラー2」の方なんで。 
ここまでやる必要はなし
 
 シェイクしたらもう一度網で濾しましょう。ダマの量を見てもう一回やるかどうか判断してください。

 これで泥漿はでき上がりです。
 と、言いたいところなんですが、これがバッチリ使えるかどうかは別。
 なんかでチョット掬ってその滴を石膏のヘリにでも軽く置いてみてください。
 
 こんな感じに表面張力で盛り上がるくらいが濃度として適切なことが多いです。
 あんまりダラーと広がったりした場合は、水分が多すぎるか滴の量がデカすぎですね。
 また水気が吸われていく様子をよく観察してください。理想はちょっとへこむぐらい。ぺったんこになってしまった場合は水多すぎ。 
 とにかくこれが着肉の理屈を肌で実感した瞬間かな?
 全部乾いたらもう一度二度やってみましょう。

 乾いた滴の玉を横からヘラか何かで軽くこじってみてください。大した力も入れずにポロっと取れたらおめでとうございます。成功です。
 10分以上たっても綺麗にはがれずにベチョベチョになる場合、これは解膠材が多すぎだと思います。乾かす時間を長くとることで対応可能かもしれませんがのちのハンドリングがしにくい素地になること請け合いですので、原料を倍にしてやり直しましょう。(同じ量だけ足せばよい)

 だいぶ乾いてるのにはがした後に薄皮が残っちゃてる場合、ちょっと難しいタイプの失敗かも知れません。これは水分が多いか、解膠材が少ないか、いろいろ判断が難しいです。とりあえず解膠材が回ることで改善する余地があるので一日二日そのままスラリーを置いておいてください。

 とにかくこの日は鋳込み成形自体はせずに明日以降にします。そっちのがスラリーになじみが出て具合がいいので。なれてくりゃすぐに判断ついて鋳込んだりできるんですけどね。 

 個人的な経験から、スラリーの見た目で上手くいくいかないがなんとなくわかる見分け方があるんですが、
 1・ちょっと時間経つと水面に上澄み水があるような感じになる。
 2・水面がなんかダボダボしている。言葉じゃ説明しずらいなあ~!
 3・やたら水っぽい、シャバシャバしてる

 これらはあんまりよくないです。排泥した側の見込みになる面が波打つ可能性が高いです。 
これは肉が厚すぎたせいなんだけどこんな感じになっちゃう。



良い兆候としては、
 4・注いだりスプーンですくってチョロチョロと細く落とした時につーっと切れ目なく流れる 
写真使いまわしですがこんな感じ

 5・水面が鏡のようになっている。具体的には窓とか蛍光灯がピシッと映る。 
太陽だけど


これならまあよしでしょう

 あたり参考にしてみてください。具体的にどう調整していくかってのは経験で(ごめん)

 最後に、鋳込み泥漿で一番大事なのは、

「綺麗に離型するかどうか」です
 これがなってないとせっかく作った型までが痛んじゃうんですよ。石膏型捨てるのもめんどくさいので使いべり以外の理由でゴミにするのは避けましょう
 
 鋳込んだものがガタガタでも手仕上げで作品化は可能かもしれませんが外れねえんじゃしょうがねえからな!

 とにかく離型するかどうかを確認するまで本チャンするのは控えた方が賢明です。

 次回は実際に鋳込み成形してみますのでお待ち~
 
 頑張っても駄目だったスラリーがあってら、捨てないで貯めておいてください。もったいないし、これはこれで接着ドベにしたり、化粧土に使ってみたり、調合から逆算して原料を足せば釉薬にするなど、別の使い方で活かしてやりましょう。釉薬泥漿にも解膠材は有利に働くことも多いですよ(ナトリウムの存在、ドボツキを抑える)
 また、もっと流動性のない鋳込み方法、しかもまず一般の作陶家はやったことのない方法も後々紹介します。
 
 相変わらず擬音ばっかりの無駄口の多い記事でしたが役に立ったとしたら幸いです。

 また尻馬に乗って「弓と針、使う?使わない?あなたはドッチ派?」なんつって写真まで用意したんですが、広げるのが難しかったので保留しました。

ハリ(使う方)

由美(少なくとも轆轤じゃ使ったことないなあ)


 




0 件のコメント:

コメントを投稿